平成26年7月19日 土曜日
労災打切補償(労働基準法第81条)
労働基準法では、第81条に労災打ち切り補償の規定が設けられています。
長期療養中の被災者をどこまで事業所として補償すべきか ? を考えるとき参考になる規定です。
具体的には、平均賃金の1200日分を支払うことを条件に、療養開始から3年経過後に解雇出来る、と定めてあります。
この規定は大変厳しいものがあるので、使用すべきかどうか慎重に検討する必要があります。
私は、この規定を適用するときは最後の手段ですから、それ相応の覚悟を持つ必要があると考えております。
この81条打ち切り補償を適用しますと、それ以後の補償がすべて免責となり、被災者に大変厳しいことになります。
昭和28年4月8日基発第192号を見ますと、いったん打ち切り補償を支払えば、それ以後の療養給付・休業給付はもちろんのこと、障害を残した場合の障害補償・死亡した場合の遺族補償・葬祭料を支払うことはない。となっております。
ところが、最近の判例で次のようなものがあります。
打ち切り補償を支払っても、解雇は無効だとする判決です。
http://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2013_09/p38-40.pdf
http://www.roudou-kk.co.jp/jlc/archives/005849.html
東京高裁でも1審の判決が支持されています。
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-d76b.html
この東京地裁の判決には、 「 異常 」 だと感じる人が多数おられますし、これからますます解雇に対して世間の厳しい声が多くなり、逆に 「 労働者を不利 」 な立場に追いやる可能性が高まる、と危険視されています。
打ち切り補償の1200日分を支払い、解雇された被災者は、その後 「 労災保険給付 」
はもらえないのか ? というと、一度労災保険で給付を受けている被災者は、たとえ解雇されても、労災保険給付は続くことになります。
それ以後に障害と認定された場合は、一時金もしくは年金支給になります。
私の結論は、正しい考え方かどうかは別として、 「 打ち切り補償は なるべ 行わない 」
ことが、事業所としてもベストだし、労働者にとってもベストだと思います。
最近(平成27年6月8日)最高裁判決で下記のようになりました。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08HCG_Y5A600C1CR8000/
http://www.bengo4.com/roudou/1101/n_3276/
http://www.corporate-legal.jp/houmu_news1855/
この判決では、 「 労災打切補償は 有効 」 とされましたが、
高裁に審議が不十分として差し戻しています。
今後の判決には注意していく必用があります。